日本のそばは、大きく二つの系統に分けられる。一つは江戸で発達したそば文化。これには信州の土地や人が大きく貢献しているから、信州系といってもよい。現在、日本の多くのそばは、信州系である。
これに対し、出雲そばに代表される出雲系がある。信州系と出雲系の一番大きな違いは、食べ方にある。もりそば、ざるそばの場合、信州系は汁の入った容器にそばを運んで食べる。薬味も汁の容器に入れる。出雲系は割子という容器にそばが入っており、そこへ汁や薬味をかけて食べる。正反対だ。
もう一つそばの色が違う。出雲そばは、例外なく黒い。信州系は田舎そばといって黒いものもあるが、概して白い。とくに純白の「さらしな粉」で打つそばは珍重される。これは、そば粉の種類が違うのではなく、挽き方が違うのである。信州系は、一番粉という白い粉を使うことが多いのに対し、出雲系は甘皮まで挽きこんだ黒い粉を使う。こちらの方が太く、多少ざらざらするがそばの香りが強い。
信州系の温かい「かけそば」は、出雲では「釜揚げ」と呼ばれる。だが「かけそば」と少し違う。ゆでたお湯(そば湯)と一緒にそばを丼に入れ、そこへ客が汁をかけるのである。このほか、容器の割子、かけ汁の作り方や薬味などに、出雲そば独自の特徴があるが、だんだん述べることにする。
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