脱税の採算性 その2
執筆者:税理士 川崎 浩 この資料全部お読みいただいて約53秒です。
 

 脱税には売上のごまかし、経費の水増しはもちろんのこと、取引先に依頼をして納品日をずらしたり、固定資産として資産計上すべきものの内容を書き換えて経費として落としてしまう行為、在庫のごまかしなども含まれます。

 試みに、本当は決算後に購入した100万円の消耗品の納品日を操作して、今期の経費に計上する行為の採算計算(このような計算をすること自体不謹慎ですが)をしてみます。

<操作のメリット>

(1)100万円を経費に落としてしまうことによる減少税額は下記のとおり40万円です。

経費計上額    税負担率
 100万円  ×  40%  = 40万円

 ただしこの金額は、翌期に経費として処理されるので、実質的なメリットはありません。  

(2)したがって、この操作によるメリットは下記のとおり減少税額の金利分(運用利率を仮に3%とします。)のみになります。

減少税額     金利率
 40万円  ×  3%   = 1.2万円

(3)さらに、節約した利息についての税負担を考慮すると、実質のメリット額は次のとおりです。

 金利額     税引き歩留まり率
1.2万円   ×  (1−40%)   = 0.72万円

<脱税行為が発覚した場合のペナルティー>

(1) ペナルティーとして

イ. 重加算税  40万円 × 35%   = 14万円
ロ. 延滞税    計算明細は省略します    5.28万円
ハ. 合 計   14万円 + 5.28万円  = 19.28万円

(2) しかも、これらペナルティーは、税法上の経費として認められませんので、会社として19.28万円を稼ぐのには下記の利益を稼がなければなりません。

            税率
19.28万円 ÷ (1 − 40%) = 32万円

 実に7000円のメリットを得るために、45倍の32万円のリスクを抱えるということになります。言葉をかえれば、不正行為を45回試みて1回でも発覚したらアウトということになります。加えて、取引先や税務署から白い目でみられるのです。まともな経営者であれば脱税がいかに割が合わないか行為か理解していただけるのではないでしょうか。