脱税の採算性 その1
執筆者:税理士 川崎 浩 この資料全部お読みいただいて約45秒です。
 

 脱税とは意図的に売上や経費をごまかして税金を逃れる行為です。古来より「脱税による利益とそれにかかる費用は一致する。」と言われます。この格言を考えてみます。
 その前に脱税をめぐるペナルティーを理解してください。ペナルティーは、ごまかした税金の支払いを求められることは当然として、さらに(1)ごまかした税金の最大40%の重加算税(2)年率14.6%の延滞税(3)罰金及び懲役刑(脱税額が多額な場合)があります。
 税務署の主要な仕事は税金の不正行為を発見・防止することにあります。税務署は納税者から提出された税務申告書などについて、コンピュータ等を利用して書類審査を行い不審者の洗い出しをします。また、他の会社の申告資料などから不審者に関連する資料を集めた上で、不審者の会社に赴き帳簿・関係資料のチェックを行います。これが、いわゆる税務調査です。税務調査は通常3〜5年に1回は実施され、税務調査の前後に必要があれば、銀行(経営者や家族の個人預金も調べる場合もあります。)や取引先へも調査に出向くこともあります。税務署の担当官は税務調査のプロです。しかも法律で認められた一定の調査権限を持っています。したがって、その場限りの思いつき、生半可な誤魔化しは大抵見つかると考えてよいでしょう。冒頭の格言で言う「脱税にかかる費用」とは、税務署の担当官の目を逃れるためにはそれなりの工作費用が必要であるという意味です。さらに、脱税に対しての罪悪感、ばれたらどうしようという心理的負担感が加わってきます。ここを理解していただければ、脱税が割りのあわない行為であると納得していただけると思います。