総報酬制導入の影響
執筆者:社会保険労務士 太田 富晴 この資料全部お読みいただいて約120秒です。

現在健康保険や厚生年金の保険料は毎月の給料(標準報酬月額)に保険料率を乗じて計算されていますが、年3回以下の賞与からは特別保険料として低率の特別保険料が徴収されているに過ぎません。

そのため同じ年収でも賞与比率が高いほど保険料負担が軽いという不公平を是正するために保険料を年収で計算する「総報酬制」の導入が求められていました。既に厚生年金については平成15年4月の導入が決定されており、健康保険も同時期の施行を目指して改正案が本通常国会で審議されています。
「総報酬制」の導入がもたらす影響をまとめてみました。

厚生年金
総報酬制導入でどうなる(平成15年4月1日施行)
A.負担のあり方はこう変わる

  総報酬制導入前 総報酬制導入後
月 給 標準報酬月額に対する保険料率
(労使折半)
 173.5 / 1000
135.8 / 1000
標準報酬月額の上限及び下限 上限 620,000 円
下限 98,000 円
同左
賞 与 賞与に対する保険料率 (労使折半) 10 / 1000
(給付に反映しない)
135.8 / 1000
(給付に反映する)
賦課対象となる賞与額の 上限及び下限 上限及び下限なし 上限 150万円
( 1回につき) 下限 なし

※ 被用者年金全加入者の月給に対する平均賞与支給割合(0.3)から算出
(173.5×1+10×0.3)÷(1+0.3)≒135.8
参考 厚生年金の平均賞与は月給換算で3.6カ月分         
(月給12+賞与3.6)÷ 月給12=1.3
このように料率が平均賞与支給割合(0.3)を基に算出されているため、賞与の額が月給(標準報酬月額)の3.6カ月を超えると負担増になり、それより少なければ負担は軽くなります。   

B.給付のあり方はこう変わる

   年金額=総報酬制導入前の期間分+総報酬制導入後の期間分

 

健康保険 (改正案)
総報酬制導入でどうなる 負担のあり方はこう変わる

料率8.5%から8.2%・・下がるからいいんじゃないの?

  総報酬制導入前 総報酬制導入後
月 給 標準報酬月額に対する保険料率     (労使折半) 85 / 1000 82 / 1000     
標準報酬月額の上限及び下限 上限  980,000 円
下限    98,000 円
同左
賞 与 賞与に対する保険料率 (労使折半) 10 / 1000
(2/1000国庫負担あり)
82 / 1000
賦課対象となる賞与額の 上限及び下限 上限及び下限なし 上限 200万円
( 1回につき) 下限 なし

※ 政府管掌健康保険加入者の月給に対する平均賞与支給割合(0.15)から算出
(85×1+10×0.15)÷(1+0.15)≒75.2
参考 政府管掌健康保険の平均賞与は月給換算で1.9カ月分         
(月給12+平均賞与1.9)÷ 月給12=1.15
厚生年金と同じ考えによれば、新料率は7.5%と大幅にダウンするところでしたが、政管健保は火の車。赤字補填のため7/1000引き上げられました。  その結果、賞与の額が月給(標準報酬月額)の年間0.5カ月を超えると負担増になり、それより少なければ負担は軽くなります。

【事例】 月給30万円 賞与年間60万円 年間保険料比較

現 行  30万円×85/1000×12+60万円×8/1000
     =31万800円 (本人154,800円 事業主 156,000円)  

改正後  30万円×82/1000×12+60万円×82/1000
     =34万4,400円(本人・事業主とも 172,200円)
     本人 11% 事業主10%  それぞれアップ

平均的な事業所さんでも10%もの負担増が見込まれますので、それに備え早めの手当が必要と考えます。 



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