「定期借地権」についての話
執筆者:司法書士 藤木 茂 この資料全部お読みいただいて約90秒です。

 新しい借地借家法が平成4年に施行されてから、早いもので10年になります。
 ところで、この新法において創設・導入された定期借地権(略して定借とも呼ばれる)という言葉を最近はけっこう耳にするようになりました。
 「定期借地権とは、一体どんなものでしょうか。」という疑問に簡単にお応えします。

 旧借地法で認められていた借地権によれば、契約上に存続期間が定められていても、その期間が満了した時に、必ずしも地主の借地人に対する土地の明け渡し請求が認められるものとは限りませんでした。というよりも認められない場合の方が多かったのです。

 その理由は、土地明け渡しに関しては地主側に「正当事由」と呼ばれるものの認定が必要であるからです。この正当事由とは地主が借地人に対してどうしても土地の明け渡し返還が必要であるという事由のことをいいます。そして、過去の判例によればこの正当事由の認定条件が地主側に対して大変厳しいものとなっておりました。(もっとも、借主が快く土地を明け渡して返還してくれれば何の問題もないのですが・・・)

 よって、その結果として借地契約は法定更新(自動的に借地契約が継続すること)されることとなってしまい、地主はいったん土地を貸すと、なかなか明け渡し返還をしてもらえないことが多く、いろいろな弊害が生じていました。(何しろ旧借地法は戦後の家不足の時代に家主が地主から追い出されて住処を失う事を防止する意味合いが多分に含まれて立法されていたのです)

 そこで登場したのが定期借地法だったのです。

 この、定期借地法は旧法と違い、あらかじめ予定していた期間が満了すれば法的に消滅し、よって土地明け渡しの正当事由の存否を問われることもなく、したがって法定更新が問題とされることもないのです。

 定期借地権には3種類あります。以下に特徴を端的に記載しておきますので、参考にしてみて下さい。

(1)一般定期借地権
1.存続期間 50年以上
2.契約方法 書面ですること
3.法定更新 なし
4.利用目的 制約なし
5.建物買取請求権 なし

(2)建物譲渡特約付借地権
1.存続期間 30年以上
2.契約方法 書面でも口頭でもよい
3.法定更新 なし
4.利用目的 制約なし
5.建物買取請求権 あり(建物買取請求権行使により借地権が消滅)

(3)事業用借地権
1.存続期間 10年以上20年以下
2.契約方法 公正証書ですること
3.法定更新 なし
4.利用目的 事業用(居住用は除く)
5.建物買取請求権 なし

なお、定期借家権の制度も平成12年より、導入・施行されております。



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