土地を買ったのに登記をしておかなかったため、 所有権を取得できなかった話 |
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執筆者:司法書士 藤木 茂 | この資料全部お読みいただいて約47秒です。 |
松本一郎は、将来住宅を建てる目的で、大町二郎からA土地を1500万円で購入し、お金も支払っていた。 にもかかわらず、登記簿は大町二郎の名義のままになっており、松本一郎への所有権移転は、なされていなかった。 松本一郎が直ちに自分名義に所有権移転登記をしなかった理由は、大町二郎がいつでも所有権移転登記に応じると言ってくれていること、住宅が完成してから土地と建物をまとめて自分の名義に登記すればよいであろうと考えていたこと、等々からである。 ところがである! A土地の隣に住む塩尻三郎は、自分の土地が手狭のため、かねてから隣地を購入する機会を狙っていた。 そんな時、A土地が1500万円で松本一郎に売買されるという噂を聞きつけ、大町二郎に対し、自分は3000万円を出すから、ぜひ自分にA土地を譲って欲しいと頼み込みに行った。 松本一郎に売った後ではあるが、その時の倍の金額を塩尻三郎より提示された大町二郎は、困惑した。 しかし、お金の誘惑に負けた大町二郎は結局、塩尻三郎とも売買契約を締結し、3000万円を受け取ると同時に大町二郎の名義のままになっていた所有権登記を塩尻三郎名義に移してしまった。 後日、この事実を知った松本一郎は塩尻三郎に対し、先に所有権を取得したのは私であり、その時点で大町二郎は無権利者となっていたのであるから、後から所有権を取得し移転登記をしたからといってもあなたは真の所有者にはなれないこと、それでも所有権を主張するなら提訴してでも争う旨を伝えた。 それに対し、塩尻三郎は、松本一郎と大町二郎の間に所有権移転の事実が合ったかどうかということは当事者どうしの問題であり私とは関係がないし、現実問題として私は大町二郎と売買契約を締結の上お金の支払いも済ませ所有権の登記名義も私に移っていることから自分こそ真の所有者である旨を伝え、両者一歩も譲らぬ争いとなってしまったのである。 この争い、松本一郎・塩尻三郎どちらに軍配が上がったのであろうか。 タイトルからもご想像のとおり、勝ち名乗りを受けたのは、登記をしていた塩尻三郎である。 (この問題は法学部出身の人は民法176条177条に関していることと気がつかれた人が多いと思います。でも、結構奥が深いんです。興味を持たれている人が多いようなら別の機会にもっと詳しく記事にします。) |